Épisodes

  • EP. 710『@信州長野 、其ノ三 - 栗御飯から 小布施の北斎へ』
    Nov 5 2026

    秋は栗ご飯の季節。信州小布施の名物といえば、ほっくりした栗ともっちりしたもち米が美味しい栗おこわです。小布施にはもう一つ、見逃せないものがあります。葛飾北斎が祭屋台の天井に描いた「怒涛図」の波です。北斎が83歳で小布施を訪れた時、制作の場を提供したのは37歳の豪商、高井鴻山でした。北斎は百歳を超えても生き生きとした絵を描きたいという気力の持ち主。一方、鴻山は天保の飢饉に蔵を開き、食料を人々に分け与えた人物です。天井絵の波は北斎が描き、周囲の縁には北斎の下絵に鴻山が彩色した部分もあります。年齢も立場も違う二人が出会い、一つの作品を生み出した奇跡の取り合わせ。それは、同じ秋に実る栗ともち米を蒸し上げる栗おこわにも通じます。二つが一緒になることで生まれる美味しさと深さ。秋になると栗おこわをいただきに小布施へ行きたくなります。

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  • EP. 709『@信州長野 、其ノ二 - 松茸と信州大学繊維学部』
    Nov 4 2026

    秋の味覚、松茸。その聖地とも呼ばれるのが信州上田の別所温泉です。松茸は日当たりと水はけがよく、栄養の少ない土壌に育つアカマツと深い関係があります。アカマツが光合成で作る糖分を養分に育つ松茸。土瓶蒸しにすれば、香りとともに秋の深まりを感じます。上田には日本で唯一の繊維学部を持つ信州大学があります。前身は上田蚕糸専門学校。かつて上田は養蚕と製糸で栄え、日本の生糸や蚕は、蚕の病気に苦しんでいたフランスなどへ輸出されました。やがて化学繊維の普及で絹は高価なものになりましたが、国産松茸も今では高価な秋の味覚です。松茸を育むアカマツの林を守ることは、日本の風景を守ることにもつながります。少し値が張っても、年に一度は国産松茸を一本。土瓶蒸しにして、信州の山が育んだ香りと秋をじっくり味わいたいものです。

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  • EP. 708『@信州長野 、其ノ一 - 寒ざらし蕎麦と岩波書店』
    Nov 2 2026

    岩波文庫は、来年、創刊100周年を迎えます。創刊時の22点には、夏目漱石の『こころ』も入っていました。岩波書店を創業した岩波茂雄は、信州・諏訪の出身です。新聞連載の『こころ』に感動し、漱石に出版を願い出たんですね。さて、信州といえばおそば。香り豊かな新そばもいいですが、将軍家にも献上された寒晒しそばには、また違った味わいがあります。時間と手間をかけて引き出した甘みやまろやかさを、安曇野のわさびと一緒に、ゆっくり楽しむんです。『こころ』を読みながら味わえば、作品の奥深さとそばのおいしさが重なって、岩波茂雄の粘り強さや、本が持つ力まで感じられるような気がします。

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  • EP. 707『@信楽 、其ノ四 - みんなで力を合わせて囲む鍋』
    Oct 29 2026

    料理にも焼き物にも欠かせないのが火加減。信楽では明治から昭和初期にかけて火鉢が盛んに作られ、日本の冬の暮らしを温めてきました。一方、信楽焼の登り窯は火を絶やせない厳しい仕事。長い窯焚きを終えると、職人たちはみんなで信楽焼の鍋ですき焼きを囲むそうです。近江牛に、甲賀の「しのぶネギ」「ニンニンニンジン」「ニンたままんまる」など、忍者の里らしい名前の野菜も。土を掘り、形を作り、窯を積み、火を焚き、運ぶ。多くの人の手を経て一つの器が生まれます。信楽焼の鍋でいただくすき焼きも使い込むほどに味が染み、料理が美味しくなるともいいます。料理を作るにも、それを盛る器を作るにも火が必要。火を大切に使うことを、信楽で学びました。

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  • EP. 706『@信楽 、其ノ三 - たぬき釜飯、ドローン・パッ』
    Oct 28 2026

    信楽の町は、どこへ行っても信楽焼のたぬきでいっぱい。菅笠に徳利、通帳、大きなお腹と太い尻尾。それぞれに災難への備え、人徳、信用、落ち着きなどの意味があり、「八相縁起」と呼ばれています。人の顔を見て気遣い、料理を作った人に感謝する。食卓にも通じる教えです。信楽のたぬきが全国に知られるきっかけとなったのは、1951年の昭和天皇の行幸。町の人々はたぬきにも日の丸を持たせてお迎えし、天皇は幼い頃に集めたたぬきを懐かしむ歌を詠まれました。信楽には、きのこや近江牛、野菜が入った「たぬき釜飯」もあります。「陶苑たぬき村」では、さまざまな表情のたぬきに囲まれて、バーベキューも楽しめます。笑った顔、おどけた顔、泣いているような顔。たぬきを眺めながら、みんなで笑って食事をする。これも八相縁起の教えなのかもしれません。

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  • EP. 705『@信楽 、其ノ二 - 茶粥・信楽・1200年』
    Oct 27 2026

    信楽で静かに味わいたい料理といえば、朝宮茶で炊いた茶粥。炊いたご飯にお茶を注ぐお茶漬けとは違い、お茶の香りとお米の優しさが溶け合う味わいです。信楽に近い朝宮は、最澄が唐から持ち帰ったされる茶の産地で、昼夜の寒暖差が大きく、霧に包まれる急斜面に茶畑が広がります。手間をかけて育てられる朝宮茶は、日本一高いと言われる高級茶。この茶粥を食べてきたのが、信楽焼の窯焚きをする人たち。長時間、熱い窯の前で重労働を続け、食欲が落ちた時にも、お漬物を添えた茶粥が体をいたわってくれます。器を作る土と、お茶を育てる土。同じ土地の長い時間が、一方では焼き物となり、一方ではお茶となる。華やかさはなくても、一口いただけば千二百年の時間が体に入ってくるようです。

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  • EP. 704『@信楽 、其ノ一 - 白いごはんのおいしさよ!信楽焼』
    Oct 26 2026

    滋賀県の信楽へ、お茶碗を買いに行きたくなりました。京都から草津、貴生川を経て、信楽高原鐵道で焼き物の町へ向かいます。信楽焼は鎌倉時代に始まった日本六古窯の一つで、古琵琶湖層の粘土を原料にしています。湖だった頃の記憶や、土と炎の力が器に込められているようで、心がひかれます。土の粒が見える薄緑色のお茶碗に白いご飯を盛ると、お米がきりっとして、湯気もいつもよりゆっくり立つ気がするんです。同じご飯でも、器が変わると味わい方まで変わるんですね。長い間、暮らしを支えてきた信楽焼の器でいただく一膳から、ありがたさや楽しさ、うれしさを、じんわり深く感じられるのではないかと思います。

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  • EP. 703『@只見町 、其ノ四 - 只見のお米はいろんな命に姿を変える』
    Oct 22 2026

    只見町では、お米はご飯だけでは終わりません。焼酎やウォッカにも生まれ変わります。米焼酎のブランド名は「ねっか」。地元の方言で「全く」「全然」という意味。焼酎造りで大量に出る酒粕にはアルコールが残っているため、再び蒸留してウォッカを造ります。さらに高知県産のゆずの皮を利用した「ゆずねっかウォッカ」も生まれました。アルコールを取り除いた酒粕は肥料として田んぼに還り、次のお米を育てます。雪解け水で育ったお米が姿を変え、再び土地の恵みとなる。その背景には、地域の人々が集まり、知恵を出し合い、子供たちにも食べ物の大切さを伝える暮らしがあります。

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