• Ep.950 最強の中間管理職、誕生──Claude Sonnet 4.6が変える「実務」の基準(2026年2月19日配信)
    Feb 18 2026

    「賢いAIは高いし遅い」という常識が、過去のものになろうとしています。

    2026年2月17日、Anthropicは主力モデルの最新版「Claude Sonnet 4.6」をリリースしました。このモデルの衝撃は、その立ち位置にあります。本来は「中量級」であるはずのSonnetが、わずか3ヶ月前にリリースされた自社の最重量級モデル「Opus 4.5」を、コーディングやエージェントタスクにおいて上回ってしまったのです。


    特筆すべきは、エンジニアたちが待ち望んでいた「Context Compaction(コンテキスト圧縮)」の実装です。

    これまで、長期間にわたるプロジェクトや大量のドキュメントを読み込ませると、コンテキストウィンドウ(記憶容量)が一杯になり、古い指示を忘れたり、動作が遅くなったりするのが課題でした。しかし、Sonnet 4.6はこの壁を突破しました。会話が進むにつれて古い情報をバックグラウンドで自動的に圧縮・要約し続けることで、まるで人間が長期記憶を持つように、プロジェクトの文脈を失うことなく数日、数週間にわたる作業を継続できます。


    また、以前は「実験的機能」だったComputer Use(PC操作機能)も、実用段階へと進化しました。

    初期のバージョンでは、マウス操作を誤ったり、画面のポップアップに対応できなかったりしましたが、今回のバージョンではエラー修正能力が大幅に向上。複雑な社内システムや、APIのない古い業務アプリであっても、人間の代わりに画面を見ながら確実にデータを入力・操作することが可能になっています。


    開発者たちの間では、すでに「Opusはもう要らないかもしれない」という声さえ上がり始めています。性能、速度、そしてコスト(100万トークンあたり3ドルから)のバランスにおいて、Sonnet 4.6は2026年の企業導入における「新たな標準(ゴールド・スタンダード)」となるでしょう。

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  • Ep.949 Metaの「20兆円」勝負──NVIDIAと築くAGI要塞“Prometheus”の全貌(2026年2月19日配信)
    Feb 18 2026

    「SNSの会社が、国家予算並みの買い物をしている」──今週のテック業界は、Metaが発表した桁外れのインフラ計画の話題で持ちきりです。


    ユーザーの皆様からご提示いただいたNVIDIAのプレスリリースと、直近の決算発表を総合すると、Metaのマーク・ザッカーバーグCEOが描く「AGI(汎用人工知能)」への道筋が鮮明に見えてきました。

    まず驚くべきは、その投資規模です。Metaは2026年の設備投資(Capex)を最大1350億ドル、日本円にして約20兆円に引き上げると発表しました。その資金の大部分が、NVIDIAの最新GPU「Blackwell」や次世代チップを数万基単位で並べたスーパーコンピュータ「Prometheus(プロメテウス)」の構築に注ぎ込まれます。


    なぜこれほど巨大な計算力が必要なのか。その答えは、開発中の次世代モデル「Avocado」にあります。

    これまでMetaは、高性能なAIモデルを無料で公開する「オープンソースの英雄」として振る舞ってきました。しかし、現在開発中のAvocadoについては、その圧倒的な性能ゆえに、ついに「クローズド(非公開)」に転じるのではないかという観測が強まっています。競合するGoogleやOpenAIに対抗し、巨額の投資を回収するためには、自社サービス内での独占利用に切り替える必要があるという経営判断です。


    さらに、Metaはインフラ構築を加速させるため、新組織「Meta Compute」を立ち上げ、Scale AIなどの外部パートナーとの連携を強化しています。インディアナ州レバノンでは100億ドル規模のデータセンター建設も始まりました。

    NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが「Metaは単なる顧客ではなく、AIの未来を共に建設するパートナーだ」と語る通り、両社のタッグはもはや一企業のプロジェクトを超え、AIインフラの「世界標準」を作ろうとしています。


    2026年、Metaは「つながりの会社」から「知能の会社」へと完全に脱皮しようとしています。その変貌が、私たちのスマートフォンにどのような形で降りてくるのか、Avocadoの発表が待たれます。

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  • Ep.948 「良心」か「国防」か──Anthropicと米国防総省、決裂の危機(2026年2月19日配信)
    Feb 18 2026

    「AIは兵器になり得るのか、それとも平和のための道具であるべきか」。そんな根源的な問いが、今まさにシリコンバレーとワシントンD.C.の間で大きな摩擦を生んでいます。


    2026年2月14日、Axiosは、米国防総省(ペンタゴン)が、AI企業Anthropicとの契約打ち切りを検討していると報じました。その理由は、両者の決定的な「価値観の不一致」にあります。


    国防総省は現在、OpenAI、Google、xAI、そしてAnthropicの主要4社に対し、AIモデルを「あらゆる合法的な目的」で使用できるよう求めています。これには、兵器開発、情報収集、そして戦場での直接的な作戦立案も含まれます。関係者によると、他社がこの要求に対して柔軟な姿勢、あるいは交渉の余地を見せているのに対し、Anthropicだけが「完全自律型兵器」や「大規模監視」への利用を禁じる自社のポリシーを頑として譲らず、数ヶ月にわたって交渉が平行線をたどっているといいます。


    この対立に油を注いだのが、2026年2月13日のウォール・ストリート・ジャーナルによるスクープです。同紙は、1月に行われたベネズエラのマドゥロ大統領拘束作戦において、米軍がAnthropicのAI「Claude」を使用したと報じました。これは、Palantirというデータ分析企業が提供するシステムを経由して行われたとされていますが、Anthropic側はこの報道に対し「特定の作戦での使用について協議した事実はない」と困惑を見せています。


    Anthropicにとって、自社のAIが人を傷つける作戦に使われることは、創業の理念を揺るがす事態です。一方で国防総省からすれば、AIが「これは倫理的に問題があるため回答できません」と戦場で命令を拒否することは、兵士の命に関わるリスクとなります。


    かつてGoogleの社員が軍事利用に反対して立ち上がった「Project Maven」の騒動から数年。今や多くのテック企業が国防への協力を「不可避な現実」として受け入れる中、Anthropicが示す抵抗は、AIの倫理を守ろうとする最後の砦なのか、それとも時代の変化に取り残された理想主義なのか。2026年、AIと戦争の関係は、引き返せない地点を越えようとしています。

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  • Ep.947 揺り戻し、始まる──IBM「新人採用3倍」が示すAIと人の新しい契約(2026年2月19日配信)
    Feb 18 2026

    「AIは仕事を奪う」という物語に、小さくとも確かな修正が入り始めました。

    2026年2月12日、Bloombergが報じたところによると、米IT大手のIBMは、2026年における米国内でのエントリーレベル(新人・若手)の採用数を、前年比で「3倍」に増やす計画を明らかにしました。


    このニュースが業界で驚きを持って受け止められているのには理由があります。IBMのアービンド・クリシュナCEOは以前、「バックオフィス業務などのAIで代替可能な職種については、採用を一時停止する」と明言し、いわば「AIによる人員削減」の急先鋒と見られていたからです。


    では、なぜ今になって若手の採用を急拡大させるのでしょうか。背景には、前回のエピソードでも触れた「人材の空洞化」への危機感があります。

    IBMの人事担当シニアバイスプレジデント、ニッケル・ララムーン氏によると、AI技術が急速に普及したことで、むしろ「AIを使いこなし、顧客に導入・運用できる人材」が圧倒的に不足しているといいます。


    つまり、IBMは「単純作業をするための新人」ではなく、「AIという強力な道具を操るための次世代の監督者」を求めているのです。

    IBMは近年、大学の学位を持たない人材でも、職業訓練やアプレンティスシップ(実習)を通じて採用する「スキル重視」の方針を打ち出しています。今回の大量採用も、従来のプログラミング能力だけでなく、AIが出した答えを検証する論理的思考力や、ビジネスへの適応力を重視した選考になると見られています。


    「AIに任せれば人は要らない」という単純なコスト削減のフェーズが終わり、企業は今、「AIと人間をどう組み合わせれば最強のチームになるか」という組織論の再構築を迫られています。IBMのこの動きは、その一つの回答と言えるでしょう。

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  • Ep.946 中国AIの春節攻勢──Alibaba「Qwen 3.5」が放つ、オープンソース最強の“推論脳”(2026年2月19日配信)
    Feb 18 2026

    中国全土が春節(旧正月)の祝賀ムードに包まれる中、Alibaba Cloudから世界中の開発者へ向けて、巨大な「お年玉」が届きました。ユーザーの皆様からご提示いただいた公式ブログによると、Alibabaは昨日、最新のフラッグシップモデル「Qwen 3.5(通義千問 3.5)」を正式に発表しました。


    この発表の伏線は、今年の春節商戦にありました。Alibabaは自社のQwenアプリを通じた大規模なキャンペーンを展開し、期間中に1億2000万件ものショッピング注文をAIだけで処理するという離れ業をやってのけました。App Storeの無料ランキングで1位を独走したこのアプリの裏側で稼働していた実戦データこそが、今回発表されたQwen 3.5の基盤となっています。


    Qwen 3.5の最大の特徴は、DeepSeekやOpenAIが激しく競り合っている「推論能力(Reasoning)」の強化です。

    ブログで公開されたベンチマーク結果を見ると、特に数学(MATH)とプログラミング(HumanEval)のスコアが、西側の最先端モデルと完全に肩を並べ、一部では凌駕しています。これを実現したのは、計算効率の高い「MoE(Mixture of Experts)」アーキテクチャの改良と、思考の過程を自己検証する「System 2」的な推論プロセスの導入です。


    しかし、テック業界にとって最も重要なニュースは、性能そのものよりもその「提供形態」にあります。AlibabaはこのQwen 3.5の主要なモデルを、今回も「オープンウェイト」として公開する方針を示しました。

    つまり、世界中の企業や研究者が、世界最高峰の性能を持つAIを自社のサーバーにダウンロードし、無料で(ライセンスの範囲内で)使うことができるのです。


    DeepSeek V3の登場以降、クローズドなAIとオープンなAIの性能差は急速に縮まっていましたが、Qwen 3.5の登場は「オープンソースこそが標準になる」という流れを決定づける可能性があります。2026年、AI開発の主戦場は、もはや「誰が一番賢いか」ではなく「誰が一番使われているか」に移りつつあります。

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  • Ep.945 AI音楽の“成分表示”が可能に──ソニーが放つ「著作権保護」の決定打(2026年2月19日配信)
    Feb 18 2026

    「このAIが作った曲、なんとなくあの有名バンドに似ているけれど、証拠がない」。そんな生成AI時代特有のモヤモヤに、ついに技術的な決着がつくかもしれません。


    昨日、2026年2月15日、日本経済新聞が報じたところによると、ソニーグループはAIが生成した音楽から「学習に使われた元の楽曲」を特定する新技術を開発しました。これは、いわば音楽版の「DNA鑑定」とも言える画期的なシステムです。


    これまで、AI企業と音楽業界の間では、「学習データに著作物が無断で使われているのではないか」という疑念が常にありました。しかし、AIモデルは巨大なブラックボックスであり、具体的にどの曲をどれだけ学習したかを外部から証明することは極めて困難でした。


    今回、ソニーAIが開発した技術のすごいところは、その「貢献度」を数値で示せる点です。例えば、あるAI楽曲に対し「この曲はマイケル・ジャクソンの特定のリズムパターンを20%参照している」といった具体的な解析が可能になります。


    さらに興味深いのは、そのアプローチです。もしAI開発企業が協力的であれば、モデルの内部データを直接解析し、非協力的な場合でも、出力された曲の波形や特徴量を既存の膨大なカタログと比較することで、元ネタを「推定」できる機能を備えています。


    ソニーは世界最大級の音楽出版社であり、ビートルズやクイーンといった伝説的なアーティストの権利を管理しています。今回の技術は、単に違法AIを摘発するためだけのものではなく、「AI開発者が正当な対価を払ってデータを使い、その収益がクリエイターに還元される」という、新しいビジネスモデルの基盤を作る狙いがあります。


    2024年頃から続いていた「AIと著作権」を巡る泥沼の争いが、この技術によって「公正な取引」へと変わる転換点になるかもしれません。

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  • Ep.944 Okta、社員の「野良AI」を一網打尽に──“エージェンティック企業”を守る新技術(2026年2月19日配信)
    Feb 18 2026

    前回のエピソードで、個人が開発した便利なAIエージェント「OpenClaw」が爆発的に普及しているという話をしました。しかし、その裏側で、企業のセキュリティ担当者は冷や汗をかき続けています。なぜなら、社員が勝手に導入したそのAIが、会社の機密データにアクセスし放題になっている可能性があるからです。


    そんな「野良AI」の脅威に対し、ID管理の巨人Oktaがついに動きました。

    今週末、2026年2月13日、Oktaは企業のセキュリティを根底から変える新機能「Agent Discovery(エージェント・ディスカバリー)」を発表しました。


    この機能の画期的な点は、従業員のブラウザ上での振る舞いを監視し、彼らが新しいAIツールに「Googleでログイン」や「Microsoftアカウントで連携」といったボタンを押した瞬間、その「握手(ハンドシェイク)」を検知できることです。

    これにより、情報システム部門は、「誰が」「どのAIツールに」「どんな権限を与えたか」をリアルタイムで可視化できます。「このAIは営業部の田中さんが使い始め、カレンダーの読み取り権限を持っている」といった情報が、ダッシュボード上に地図のように浮かび上がるのです。


    Oktaのハリーシュ・ペリSVPは、「AIエージェントはネットワークやデバイスの層ではなく、アプリケーションの層に住んでいる」と指摘します。だからこそ、従来のファイアウォールでは防げず、ID(アイデンティティ)の管理こそが唯一の防衛線になるというわけです。


    重要なのは、Oktaがこれらを「禁止」するのではなく、「管理下」に置くことを目指している点です。発見したAIエージェントに正規のID(社員証)を発行し、適切なルールを適用することで、社員の生産性を落とさずにリスクだけを取り除く。これこそが、AIと人間が共存する「エージェンティック・エンタープライズ」のあるべき姿だというメッセージが込められています。

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  • Ep.943 野良AIの英雄、巨人の懐へ──OpenClaw作者、OpenAI入りを表明(2026年2月19日配信)
    Feb 18 2026

    「もしも、たった一人のハッカーが週末に作ったプログラムが、世界最強のAI企業の戦略を変えてしまったとしたら?」──そんな映画のような話が、現実になりました。


    ユーザーの皆様から頂いたURLにある通り、オープンソース界で今最も熱い視線を浴びているAIエージェント「OpenClaw」。その生みの親であるピーター・シュタインバーガー氏が、自身のブログでOpenAIへの参加を正式に発表しました。


    このニュースの何が面白いかというと、その経緯が実にドラマチックだからです。

    OpenClawはもともと、シュタインバーガー氏が「WhatsAppから自宅のMacを操作したい」という個人的な動機で開発したツールでした。当初は競合であるAnthropic社のAI「Claude」をメインに使っていたため、「Clawdbot」という名前で公開されましたが、Anthropic側から商標権の侵害だとクレームを受け、二度の改名を経て現在の「OpenClaw」に落ち着いたという、いわば「反骨のプロジェクト」だったのです。


    そんな「野良AI」の英雄が、最終的に選んだパートナーが、Anthropicの最大のライバルであるOpenAIだったというのは、なんとも皮肉であり、同時に痛快な展開です。

    ブログによると、シュタインバーガー氏は先週サンフランシスコで主要なAIラボを回り、最終的に「OpenClawをオープンソースのまま存続させ、財団化して中立性を保つ」という条件を快諾したOpenAIと手を組むことを決めました。OpenAIは彼を雇用するだけでなく、プロジェクトのスポンサーとして資金提供も行います。


    これは、OpenAIにとっても大きな賭けです。彼らは自社で「Operator」というエージェント機能を開発していますが、あえて外部の強力なコミュニティを取り込むことで、AIエージェントのエコシステム全体を握ろうとしているようにも見えます。

    たった数ヶ月でGitHubのスター数を塗り替え、巨大テック企業を振り向かせた一人のエンジニアの情熱。2026年のAI業界は、企業と個人の境界線がかつてないほど曖昧になり、混ざり合っていく年になりそうです。

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